最近、生意気で気に入らない妹を脅かすには、これは絶好の機会だと。

 全員が揃い始まったと思った瞬間に、風が唸る音がした。空気を刃物で切り裂くような音がして、アクィラの面々も反応が難しかったと思う。

 だって、その攻撃は彼らではなく、関係者席に居た私たちに向けられていたからだ。

 私の身体は勝手に、隣に居たフローラを庇っていた。

 フローラはこの世界にとって必要な存在だし、リッチ先生の企みに対しても彼女さえ居れば何とかなる可能性はあった。

 私が使うことの出来る魔法は、赤魔法でほぼ攻撃魔法。

 誰かを守るような結界を張る能力はなくて、この子を守るには……この、身体を張るしか。

「……オスカー!」

 目を瞑って迫り来る攻撃を覚悟していた私の耳に届いたのは、エルネストがオスカーを呼んだ大きな声だった。

「……え?」

「あ……オスカー先輩……」

 フローラは目に見えて震えて、怯えていた。

 私も何があったのかと背後を振り返れば、身体能力の高いオスカーが、私たちの居る関係者席を庇うためにここまで移動して来てくれたらしい。