私が手を差し出したところで、その手を扇で打たれて私は驚いた。そして、それをしたのは、オスカーの姉サリーだった。

「何をしているの。私以外の誰かと踊るなんて、ダメよ!」

「ねっ……姉さん?」

 サリーがただそこに現れただけだと言うのに、身体の大きなオスカーは、すっかり怯えた目になってしまっている。私は彼を庇うようにして前へ出た。

 虐め慣れた様子のサリーは私が彼女に臆せずに、睨み返したことが、意外だったのだろう。

 サリーが私の手を無遠慮に打ったこともあり、周囲からの非難の視線が集まり、これは形勢不利だと思ったのか、彼女は舌打ちをするとどこかへ去って行った。

 そして、オスカーが私の肩に触れていることに気がついた。相当、怖かったのだろう。

 アクィラでも最強と噂される魔剣士の彼が姉に怯えるなんてと思う人も居るかもしれないけど……彼の過去を思えば、それは仕方がない。

「あの……オスカー先輩、大丈夫ですか?」

 私がそう尋ねると、彼はハッとした様子で手を挙げた。やはり、無意識の行動だったのだと思う。

「……ごめんね。あの人はきっと、ロゼッタちゃんを目の敵にするだろう」