妹と同じ赤髪に茶色の瞳を持つ兄サザールは、正面の席に座っているロゼッタのことをじっと見つめ、何か粗相をしないのかと、じろじろと監視しているようだ。

 そんなことをされてしまったら、緊張してしまい普通に動作することも難しい。

 気に入らない妹を萎縮させることこそが彼の狙いであることは、大人の記憶を持つ今ではわかってしまっているけど。

 魔法界でも、栄養が取れさえすれば良い、粗食が美徳とされているアクィラ地域に住んでいて……ただでさえ、食事が美味しくないのに……そんなにも鋭い視線を向けられたら、味もしなくなってしまう。

「おい……ロゼッタ。お兄様に対し、楽しい話題の提供も出来ないのか? ……相変わらず、愛想のない女だ。これで、エルネスト殿下と本当に親しく出来ているのか? 甚だ疑問だ」

 良くわからない非難理由でただ食事をしているだけの妹を鼻で笑ったディリンジャー家を継ぐサザールは、たった一人の妹をこうして虐めることにかけては天才的だ。

 ちょっとした不手際を理由に、罰として地下室に閉じ込めたり、寒い外へと閉め出したり……本当にひどいことばかりしていた。