「……すみません。ご迷惑でしたね」

 悲しそうな表情になってしまったイエルクに、私は慌てて言った。

「えっ……待って! 別にこうして心配してくれることは、迷惑ではないわよ。けど、こういう事をすると誤解するの。付き合っている女の子を悲しませてしまうから、それはしてはいけないの。わかった?」

 私は人としての常識を教えるつもりで、イエルクにそう言った。

「はい。わかりました。付き合っている女の子が居たら、こういうことはしてはいけないんですね……もうしません」

「ええ。わかってくれたのね」

 イエルクは、本当に素直で良い子だ。

「ロゼッタ先輩って、優しいですね」

「そんなことないわよ。もしかしたら、イエルクにだけかもしれないけど」

 ……なんてね。まあ、絶対にないとわかっている私たちだから、成立する会話だよね。

「先輩は会長のことが、お好きだったとお聞きしましたけど」

 唐突にイエルクに言われて、私ははあっと大きくため息をついた。そんな過ぎ去った黒歴史、誰が教えたのかしら。