こんな風に、屋根から女子寮に侵入した人……居るのかしら。ううん。屋根から侵入するなんて、本当に信じられない……怒られるどころでは済まなくない!?

 え。待って。

 けど、これだとイエルクは寮の部屋へ、侵入はしていない……? うん。身体は、窓の外に居るもんね。

 だから、私が住んでいる女子寮の番人三頭の犬《ケルベロス》も、彼の存在には気が付いていないのかしら。

「すみません。先輩……合宿の時にひいた風邪が、なかなか治らないと聞いていて、心配になってしまって……」

 素直に理由を話したイエルクの理由を聞いて、私は頭を抱えたくなってしまった。

 そうよね。

 イエルク……貴方があまり人慣れしていなくて、そういう人だって、それはわかっているけど、普通は心配しても、こんな風には屋根から訪ねたりなんてしないんだよ!

 それに、私の住んでいる女子寮は男子禁制。

 もし、女の子への悪戯目的で入ろうとした人が居れば、比喩でもなく、三つの頭を持つ番犬三頭の犬《ケルベロス》に、かみ殺されてしまう。

 恐ろしいけど、そういう事件が、遠い昔に、実際にあったらしい。