「エルネスト様は、もしかして、お兄様はあまり好きではないのですか?」

 私にも血の繋がった兄サザールが居るけど、あまり好きではないなんてレベルはとうに通り越して、話もろくに聞いてもらえないし大嫌い。

「いいや……兄上は尊敬している。尊敬しているからこそ、兄上に対し俺は単純な好悪では、あの人へ向ける感情を表現出来ない。それでも、同じ親から生まれた兄弟なのにとは思う……ああ。やっと、帰って来たか」

 私はエルネストが後ろを振り向いた視線の先を辿って、オスカーとイエルクが大きな担架を持ってきたのが見えた。

 乙女ゲームでもエルネストのこんな独白を、聞いたことはなかった。

 もしかしたら、ハッピーエンドの後でヒロインフローラにのみ伝えられる特殊な設定なのかもしれない。

 ……エルネストがそういう気持ちを臆さずに話出来る女の子が、現れたら良いと思う。

 この時点でも、彼からの好感度が絶望的な私は、そう願うことしか出来ないけど。