「おいおい……川に流されてしまったお前が、人の心配などをしている場合か。フローラならば大丈夫だ。既に見つかって、今は合宿所の方に居る。意識を失ったお前を運ぶために、オスカーとイエルクは担架を取りに行ったんだ。もし、君が頭を打っていたなら、なるべく揺らさない方が良いと思ってな」

 どんなに嫌っていたとしても、私のために、完璧な采配をしてくれたエルネスト。

 本当に王族たる王族だし、嫌われていたとしても、素敵な男性だと思う。

「あ……綺麗」

 思わず言葉が出てしまったのは、波の合間にイルカが群れて泳いでいたのが見えたからだ。魔法界のイルカは何故か自ら発光し、夜の海の中に光るイルカが泳いでいる光景は幻想的だった。

「……お前とみても、ロマンスのかけらも感じないな」

「申し訳ありません……けど、綺麗ですね」

 エルネストはここで自分に異常なくらいの執着を見せていたロゼッタに、勘違いされないようにと、牽制したかったのかもしれない。素っ気ない言葉に、私は謝罪を返した。

 けど、彼が思ったいた通りの反応とは違ったせいか、エルネストは変な表情になっていた。