これまでにエルネストがどれだけロゼッタに対し、我慢を重ねたかは、女性に対し紳士的な彼がロゼッタに対してだけ異常に冷たいことでそれが良く理解出来る。

 エルネストだって、女性には優しくしたいのに、ロゼッタに優しくしてしまえば、よりもっと自分の嫌なことをされてしまう。

 だから、ロゼッタを必要以上に、毛嫌いしてしまったのだ。そして、冷たくされると燃え上がってしまうロゼッタに、より纏わりつかれてしまうと言う、不幸の連鎖が続いてしまった。

「それは、もう良い。だが、人が変わったように思える。君が君でなくなったような……そんな気がするんだ」

 エルネストは振り向き、私は青い目にまっすぐに見つめられ、怖くなって後ずさった。王族の威厳……他者を支配し圧する力。それに押し出されるように、もう一歩後ろに下がった。

「……っ、ロゼッタ。お前。何をしている!」

 私が彼の言葉に聞いてえっと思った時には、もう遅かった。足場を失った私の身体はふわりと宙に浮き、その一瞬後に、ザバンと大きな水音が聞こえた。


◇◆◇