「待ってください。そういえば、フローラさん……ここに来るまでに、僕に苔のことが気になる話をしていました。もしかしたら、洞窟内にある苔を大好きな庭師の人に持って帰ってあげようと奥に入ったのかもしれません」

 暗い表情のイエルクが言ってから、私たちは同時にため息をついた。

 それだわ。絶対にそれだわ。フローラの思考の流れが目に見えるよう。

 本当に可愛い思考を持っているフローラは庭師ルークさんが喜んでくれると思って、洞窟の奥へと入り込み、迷って出られなくなってしまったのね。

 私たちも洞窟内へ向かい、名前を呼んだり距離の近い部分を探したりしたけれど、フローラはかなり動き回っているらしく、足跡や痕跡が洞窟内に残っていて、簡単には見つかりそうもなかった。

「これは……イエルクの行った通りだろう。探すしかないな。ここでまた誰かが、迷っても仕方ない。四人で個別に探すのではなく、二人組になって二手に別れよう」

 エルネストはテキパキと、これから私たちがどうすべきかを指示をした。

 それを見て、やはりエルネストは王族なのだと思う。命令をし慣れた者特有の、迷いない言葉。