慎ましく閉じていた可愛い蕾も、ぽかぽかとした陽気に誘われて花咲く春。

 本日は初々しい新入生が、真新しい制服を着て、登校する入学式の日。

 この魔法界は正真正銘、異世界。

 けれど、前世の私が生まれ育った日本のように、薄紅色の桜吹雪が白い並木道に舞い散っていた。とても乙女っぽい可愛らしい色合い。

 そもそも論で、なぜ異世界なのに日本語だったり和製英語だったりが通じるのよって話だから、季節の花の名前が同じなんて、小さな事を気にしてしまう方がおかしいのかもしれない。

 だって……今の私が住んでいる魔法界は名前も知らない誰かが、自分の都合良く創った、乙女ゲーム『恋色★魔法学園』の世界なのだから。

 鷲が校章(シンボルマーク)であるアクィラ魔法学園高等部二年生の私は、校門付近にある低い塀の後ろへさりげなく立って、ゲーム内の主役の二人が出会う決定的な瞬間を、今か今かと待ちわびていた。