「僕が(かすみ)くんに無視されているところを毎日見てるでしょ」

 「霞くんってテラっち以外には、優しい王子様っぽく微笑むのにね」

 「僕が嫌われている証拠」


 ブルーになるから認めたくないけど。

 流瑠ちゃんは僕に、何らかのアクションをさせたいんだろう。


 「好きだからこそ近寄れない。嫌われるくらいならいっそ距離を取ろう。そんな話、マンガではザラだよ」


 菜箸の先端を僕に向けうなづいているが……

 ごめんね、僕は行動なんてできないよ。

 見てごらん、テニスコートにいる僕の推しカプ二人を。

 笑いながら肩をぶつけあっているあたり、僕が割って入るすきなんてないでしょ。

 あごをしゃくって、霞くんと奏多くんの方に流瑠ちゃんの視線を誘導する。


 「あぁ、距離感近いよね、あの二人」


 地雷カプだからって睨むのはどうかと思うよ。

 流瑠ちゃんの注意を僕に戻そう。

 あえてオーバーにため息を吐いた。


 「僕と霞くんがくっつく妄想はもうやめて」

 「凛として優雅に微笑む霞くんと、いっつも笑顔で無邪気で可愛いわんこ系のテラっち。これ以上のカプがどこに存在してるっていうの? いらっしゃったら拝みたいくらいだよ」