またか。

 傷つくとわかっていながら、ついテニスコートの霞くんを瞳に映してしまった。

 僕の瞳ってドM確定?

 ただのチラ見グセにしては諦めが悪すぎるよ。

 ほらやっぱり、霞くんを見なきゃよかったでしょ。

 僕の心の弱い部分が、後悔の悲鳴をあげている。

 奏多くんはラケットを担ぎ、霞くんの肩を抱いている最中で、ニヒヒと笑みをこぼしながら、霞くんのサラサラな髪を豪快にかき乱した。

 霞くんは奏多くんの腕を跳ねのけることなく、楽しそうに肩を揺らしている。

 仲が良すぎ。

 霞くんの幼なじみは、僕じゃなくて奏多くんだったんじゃないかな。

 二人はすでに付き合っていたりして。
 

 霞くんと奏多くんの【カスミソウ】コンビは、女子たちにも大人気だ。

 麗しすぎて目の保養になると、あえて3年の廊下までのぞきに来る集団が後を絶たない。

 おっとり微笑む優雅な王子様タイプの霞くん。

 それに対し、奏多くんは見た目も性格もオスっぽい俺様系。

 二人とも美形すぎで並ぶとさらに尊さが増す。

 手を合わせて拝みたくなるご神仏レベルの神々しさだから、キラキラ直視は目の疲労面で長時間要注意。

 なんの取り柄もない僕なんかが割って入るす隙間は、残念ながら一ミリもない。