もう僕は期待しないって決めたんだ。

 どうせ霞くんに選ばれない。友達にも恋人にも。

 校内だけならまだしも、たまに一緒になる狭いバスの中でも無視されまくっているのがその証拠。

 期待って残酷なんだよ。

 輝かしい未来像がモクモクと膨らむほど、裏切られた時のショックは計り知れない。

 ハートがめった刺しに斬り刻まれてしまうんだ。

 だから僕は、霞くんと奏多くんを推しカプと思い込むことにしたわけで。

 【カスミソウ】が本当に付き合ってくれれば、霞くん以外の人を好きになれるかもと微かな期待を持ってしまっているわけで。

 はぁぁぁ。 

 霞くん以外を好きになれる日なんて、この先来るのかな……


 「なんか今、睨まれた気がする」


 なんのことと、僕は首をひねる。

 ポニーテールを揺らしながら、流瑠ちゃんはテニスコートを指さした。


 「霞くんだよ、こっち見てた。やっぱりテラっちに気があるって」


 いやいや、それはない。

 僕が外に視線を向けている今まさに、奏多くんと笑い合っているわけだし。