ほんと腐女子ちゃんは妄想力が半端ないな。

 その偉大な妄想で世界平和が実現できるのではないかと、本気で思える時があるし。


 「流瑠ちゃん、魂は大事してよ」


 僕の口から冷たいため息がもれる。

 つっこんだ数秒後、遅れてブハッと笑いがこみあげてきた。

 推しカプにキュンキュンしたせいで脳が破裂してもいいと思っているの?

 アハハ、流瑠ちゃんの脳内をのぞいてみたいよ。

 頭をメスで解剖して。いやいやグロテスクすぎ~


 「あっ、いま私をバカにしたでしょ」

 「違う違う」と手を振りながらも、目じりにたまった笑い涙をサッと拭いさる。


 「琉瑠ちゃんが瞳を輝かせながらありったけの熱量で好きを語りつくすから、幸せそうでなによりだなってしみじみ浸ってただけ」


 僕と霞くんのイチャイチャを妄想されるのは恥ずかしいから、やめて欲しかったりするけれど。


 「テラっちさ、今年の夏も制服の半袖着ない気? 長袖暑くない? もうみんな衣替えしてるよ」


 突然流瑠ちゃんが話題を変えたせい、笑いの熱が急速冷凍。悲しみがヌモっと顔を出す。

 作り笑いが顔に張りつけられなくて、長めの前髪で目を隠した。