「僕たちが親友だったのは小学校まで。そのあとは友達ですらなくなっちゃったの。そのこと前に流瑠ちゃんに話したよね?」

 「聞いたけど……」


 重苦しい空気を一掃したい。

 浮かない表情の流瑠ちゃんに向かって「この話は終わりね」と、僕は目じりを下げた。


 「具が柔らかくなったんじゃない? いい感じだよ。玉ねぎも透明になったし。味付けして卵を流しいれて、親子丼を完成させちゃおう!」


 声を弾ませた僕に対し流瑠ちゃんはムスっ。

 負の感情をほっぺに詰め込んでいる。


 「最重要案件。味付けは料理上手な流瑠ちゃんに任せた」


 醤油の小瓶を手渡したところで、ようやく流瑠ちゃんのほっぺから空気が逃げた。

 何かを自分に言い聞かせているのか、高速でうんうんと頷いているのが微笑ましい。


 「あぁぁぁ、わかるよわかる。私にとっての推しカプは、テラっちにとっての地雷カプだもんね」


 そういうことにしておいて。

 霞くんへの恋心を捨て去るためには、霞くんは奏多くんとお似合いだって思い込むしかないから。