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「ハァッ!?」
変な奇声を上げながら、ガバッと飛び起きる。
ふかふかのベッドで寝ていただけなのに、長距離走ったあとのように体中が熱く息が弾んでいる。
「ハァッ……ハァッ……。い、今の記憶は……!?」
アバントラ王国首都にある、ワトフォード公爵邸に住んでいる私、フェリシー17歳。
ある日、いきなり前世を思い出しました。
な、なんで急に前世の記憶が!?
スマホゲームが大好きな24歳のO Lだった私。
つい先ほど思い出したばかりの自分の前世は、まるで昨日のことのように鮮明に映像化されていた。
最低でも17年以上前のことなのに、なんでこんなにハッキリ思い出せるの??
何これ? どうなってるの?
先ほどの記憶だけではない。
よく通っていたお店のご飯、推しのイラストレーターさんの絵、ムカつく上司の顔まで鮮明に思い出せる。
ただ、自分の最期については全然思い出せない。
さっき思い出した場面が最後で、それ以降の記憶がない。
あれ? 私、いつどうやって死んじゃったんだっけ?
なんでそこだけ思い出せないんだろう……。
自分がなぜ死んだのかはわからないけど、どうやら新しく生まれ変わった世界は前世で言うところの異世界らしい。
髪の色や瞳の色がみんなカラフルで統一していないし、貴族やら馬車やらよく読んでいた漫画やゲームの世界観そのままだ。
「……異世界って本当にあったんだ……」
ボーーッとした状態のままそう呟いたとき、コンコンコンという素早いノックとともにすぐ部屋のドアがガチャッと開いた。
ノックの意味がまるでない。
そんな無意味ノックをしたメイドのマゼランは、私を見るなり不快そうに目を細めた。