ディランはムスッと不機嫌そうな顔でズカズカと部屋を横切り、私の目の前に立った。
 今までも何度か会ったことがあるのに、前世の記憶を思い出した後だとなんだか不思議な感覚だ。



 改めて見ても、本当にゲームの顔そのまま!
 こんなに綺麗な顔の人が実在してるなんて、信じられない……!



 そんな見目麗しい青年は、見下すように私をジロリと睨みつけた。


「お前。祈りにも行かずに部屋でだらけてるってのは本当らしいな」

「…………」


 生意気そうな口調で話す内容は、やはりゲームと同じセリフだ。
 この後にどんな言葉が続くかわかっている分、私はディランから目をそらさずにジッとその場に立ち続ける。


「妹の代わりに、しっかりとした令嬢になるって言ってなかったか?」

「…………」

「それがもうサボりとは、ご立派なことだ。もしかして、もう完璧な令嬢にでもなった気でいるのか?」

「…………」

「じゃあ、俺が確かめてやるよ。『令嬢ごっこ』でな」

「!」



 きたっ!!



 ディランはニヤッと意地悪そうに口角を上げると、ドレスの並ぶドレスルームを指した。
 次にくる言葉もわかっている。


「テーマは『お茶会』だ。ワトフォード公爵家の令嬢として、恥ずかしくない格好を自分で考えろ。ドレスに着替えるときだけは、メイドを中に入れてやる」


 ピロン

 ディランのゲーム説明が終わった瞬間、目の前にパッと選択肢が現れた。


 『【イベント発生】令嬢ごっこ
 どのドレスに着替えますか?

 ①黒いドレス
 ②赤いドレス
 ③ピンク色のドレス』