三男レオンを選ぶつもりが、間違って次男ディランにつながる選択肢を押してしまった。
サーーッと全身から血の気が引いていく。
「どうしよう!! まさかディランを選んじゃうなんて!」
レオンを選ぶつもりでシミュレーションしていたというのに、最初から予定外の展開になってしまった。
ダラダラと冷や汗が出てくるけれど、いつまでも自分を責めている場合ではない。
ゲーム通りなら、もうすぐこの部屋にディランがやってくるのだ。
「たしか……ディランとの最初のイベントは、『令嬢ごっこ』だったよね? 最後のほうはずっとレオンを選んでたからうろ覚えだけど、①のドレスなら1%しか減らなかったはず……」
すごく気分の悪くなるイベントだからやりたくなかったけど、そんなこと言ってられない!
まだ長男のエリオットじゃなくて良かったと思うしかないわ!
「今は、とりあえず少しでも好感度が減らない選択肢を選ぶしかない!」
グッと拳を握って決意したとき、部屋の扉が開いた。
ノックもなしに勝手に入ってきたのは、もちろんディランだ。
ワトフォード公爵家の次男、ディラン・ワトフォード。22歳。
短い金髪をツンツンに立たせているような髪型に、フェリシーと同じ赤い瞳。
モデルのようなスタイルの良さと顔面偏差値の高さ。でも、眉と目を挑発するように吊り上げているため非常に性格が悪そうに見える。
ゲームの中では、『単純短気の乱暴者だけど実は情に厚いキャラ』として紹介されているけれど、情に厚いところなんて一度も見たことがない。
……まぁ、妹を1番真剣に捜しているから、そこが情に厚いってことなのかも?