「ああっ! また死んだ!!」


 私はスマホ画面から目を離し、すぐ下にある枕にボスッと顔をうずめた。
 仕事終わりにベッドの上でゲームをする──その楽しみのために1日がんばって働いてきたというのに、気分は最悪だ。

 時計を見るとすでに深夜の3時になっていた。



 あーー……やばい。
 明日も6時起きだっていうのに……3時間しか寝れないじゃん。



 早く寝なければ。
 明日も仕事なんだから。
 そう頭ではわかっているのに、私はスマホに映るゲームのデザイン画をジッと見つめた。

 横に並んだ煌びやかな3人のイケメン。
 このゲームの攻略対象者たちだ。


「この綺麗なイラストに騙されたわ……。まさか、こんなにも攻略不可能なクソゲーだったなんて……」


 あまりにも攻略できないので検索をかけたところ、次から次へと『クソゲー』『ふざけんな。時間を返せ』などのクレームばかりを見る羽目になった。

 それを見てすぐに止めればよかったのに、そこで「それでも絶対に攻略してやる!」と意気込んでしまったのがそもそもの間違いだった。



 だって、まさか1人も攻略できないなんて!!
 しかも誰1人として好感度20%以上にならないっておかしくない!? ……まぁ、おかしいからこれだけボロボロに評価されてるんだろうけど!
 


「ああ……もう諦めようかなぁ……」


 1週間かけてやってきて最高好感度が17%だなんて、さすがにやる気もなくなるというものだ。
 むしろ、よくここまで続けたと自分を褒めてあげたい。

 だんだんと重くなっていく瞼を擦り、スマホの画面を見る。


『このゲームを最初からやり直しますか? はい・いいえ』

 
 好感度がゼロになり、最悪なエンドを迎えたあとに出てくる画面だ。
 いったいこの1週間で何度この画面を見たことか。



 最後にあと1回だけ……!



 ゲームは明日やろう。
 とりあえずリセットボタンだけ。
 ほぼ無意識のまま『はい』を押した私は、そのまま眠りについた。