ストローを指に絡める。グラスの中でぐるぐる回って、二つの丸い氷もグラスの中でぐるぐる回る。

 噛んだストローの先から流れ込むジュースは、甘ったるくて舌に纏わりつく。

 ゆらゆらと揺れる氷をストローで突っつくと浮き沈みを繰り返す。

 私は静かな家の中で吐息をもらす。明るい窓辺は蒼白いように冷たくて、グラスの縁が光るのがキレイ。


 ――あまい、あまい。


 深くストローを咥え込んで、喉の奥へと呑み込む。前歯で噛んだストローは歪んで、角が刺さる。

 底の見え出したグラスから空気が入り込んで、ストローが嫌な音を立てる。

 ストローをグラスから外して、底に当たっていた部分を掲げて舐める。ストローをテーブルクロスの上に置いて、グラスを両手で掴んだ。

 グラスの縁に唇を押し当てて、大きく口を開いて傾ける。大きな氷が二つ口の中に転がり込んで、喉に詰まるのを舌で受け止める。


 ――いったいなにをみていたの、きっとわたしをみてた。


 大きな氷を二つ含むには私の口は小さくて、苦しいけれど二つ揃いのそれを両方とも収めてしまう。

 窒息しそう。

 弾力のあるグミのような氷は少し歪な球形で、私はそれを楽しむように氷を上顎の裏に押し付けたり、頬に一つずつ入れて外から指で突っついてみたりする。

 全部食べて、消化して、吸収して、一つになるの。

 私から奪うなんて許さない。引き離そうとするなんて許せない。


 ――だから、わたしは……


 膨らむ頬に私は笑って、決して奪われない方法を思いついた。

 奪われない、奪わせない、どう足掻いてももう遅い。私達の絆は永遠なの。奪おうとしても無駄。もう遅い。もう私になった。

 私のお腹を開いてみても、もう取り返せない。

 いけないのよ、そんな事をしようとするから。許せない。だから、そうしたの。だって、それが一番じゃない。

 私は笑う。右の奥歯と左の奥歯、私は嘲うように口を開いて二つの氷を挟み込む。そうして恍惚と顎に優しい力を込めて、ぷちゅりと。