私の言葉を聞いてランベルト様は苦虫をかみつぶしたような顔になった。

「……それが、僕にとっては一番に良い事だと、イリーナは思うのか?」

「ええ。ランベルト様はディルクージュ王国王太子で、私たち貴族が尊びお仕えしているお方……いずれ結ばれる女性と幼い頃と一緒に居られるなら、それが一番良い事かと」

「……しかし、わからないな。君が婚約者になってエリサという女性が後に現れる。もし、二人が恋に落ちても、示談金付きでの婚約解消という話なら、まだ僕も理解出来るのだが、イリーナは何も悪くないのに、どうして婚約破棄という結果になってしまうと言うんだ」

 ランベルト様は私と婚約していたとしたら、何故『婚約解消』ではなく『婚約破棄』になってしまうのかという理由が知りたいようだった。

 未婚の女性にとっては『婚約破棄』は、最大の不名誉。する側だって出来るだけ、それをするのは避けたいと思う事は普通だろう。

「ランベルト様とエリサは、恋に落ちて……私が彼女に嫉妬して、彼女に嫌がらせをするようになるんです。それがだんだんと|酷くなって(エスカレートして)しまい、彼女を殺そうとまで企むほどに思い詰めるのですわ」

 それが、悪役令嬢イリーナ・アラゴンの役目。

 素敵な攻略対象者ランベルト様ほどの人と婚約してしまえば、恋敵を殺してしまうまで恋をして思い詰めてしまうしかないのだ。