「ランベルト様には十六歳になれば、運命の乙女が市井より現れますので、彼女の登場をお待ちになっていただけますと、私もランベルト様も、運命の乙女のエリサ様も幸せになりますので、それが一番かと」

 私は淡々とこの先の起こる展開を説明し、ランベルト様がここで婚約を断ってくれると、主要キャラクターである三人全員にメリットがあるという事を彼に伝えた。

 初対面でのいきなりのぶちまけ話に困惑顔な王太子ランベルト様をなんとか説得して婚約から逃れないと、私は悪役令嬢の立場にならざるを得ないし、例のゲーム強制力とやらが働いてしまうかもしれない。

 生まれ持った身分や境遇を見れば完璧な悪役令嬢に転生したのなら、その恩恵だけを頂いて、持っている情報を出来る限り渡し、あとはそちらでどうにかして貰いたい。

 だって、普通に悪役令嬢として生きて、その上で乙女ゲーム内の問題解決するって、出来るだけ楽したい願望のある私には、おそらく無理だと思うもの。

「おいおい。待て待て待て……イリーナ。君は僕の未来の伴侶だって、既に決まっていると言うのか?」

 顔合わせは開始の時には関係者の大人たちもいたけれど、あとはお若いお二人で言わんばかりに二人になって、ここには私たちしか居ないと言うのに、ランベルト様は声を潜めてそう言った。

 使用人はどんな話を聞いても、聞こえないふりをする。もっとも、こんな話を私たちがしていたと言ったところで、誰も信じられないと思うけれど。