ついこの前に、前世の記憶を取り戻した私は、自分が乙女ゲームで色々あってから断罪される悪役令嬢イリーナ・アラゴンだと気がついた。
ランベルト様と婚約をし何も考えずにそのまま悪役令嬢として過ごせば、ヒロインの選ぶ選択肢にとっては、とんでもない未来が待って居る。
私としては悪役令嬢として生きるなんて絶対に嫌だけど、裕福なアラゴン公爵令嬢の座は捨てたくない。
面倒な事は出来るだけ避けて省エネで生きて来た前世を持つ私は、一文無しで辺境スタートどんと来いなんて、そんな素晴らしい開拓者精神は持ち合わせていない。
出来る限り、楽して贅沢したい。だって、せっかく夢の優雅な貴族令嬢に生まれ変わったもの。
そうなのよ。悪役令嬢イリーナの生家アラゴン公爵家は、ディルクージュ王国で権勢を誇り、娘を王太子の婚約者に据えるように働きかけることなど何の造作もなかった。