すべての悲劇の芽を摘み取った状態で、最終的にラスボスをエリサが封印して、今ここにあるのは何の曇りもないハッピーエンディング。
後は、最後のダンスをランベルト様とエリサが踊って終わりかしら。
「まあ。何を言っていらっしゃるの。エリサ様が居なければ、私たちだってどうなっていたか……本当に感謝しております」
「私だって。イリーナ様から先んじて情報を得ていなかったら、大変だったと思います。本当にありがとうございます」
私たち二人はお礼を言い合って、何の危険もなく学校を卒業出来ることを喜んだ。
「それにしても、エリサ様。こんな所に居て、大丈夫なのですか? そろそろダンスの時間ですし、ランベルト様のところに行かれなくてもよろしいのですか?」
「……え?」
私がそう聞くとエリサは、とても驚いた表情になっていた。
「え?」
何かおかしな事を聞いたかしら。エリサが驚いた表情になったことに、私だって驚いていた。
私は情報をすべてぶち撒けた後、乙女ゲーム進行のすべてをランベルト様に任せていたから、私とエリサと話すのは、たまに世間話をする程度。
彼女が誰かに恋人自慢(マウント)する女性でもないから、ランベルト様とどうなっているか、全く知らなかったのだ。
もしかしたら、ランベルト様とは違う攻略対象者とハッピーエンドを迎えるのかしら……?
「あの、イリーナ様……何も、聞いていないのですか?」
おそるおそるといった調子で、エリサはそう言い、私は混乱してますますわからなくなった。