再会

再会の日、香苗は少し緊張しながらも期待を抱いて、約束のカフェに向かった。到着すると、圭吾はすでに席に座っており、彼女に気づくといつもと変わらない笑顔で手を振った。彼の穏やかな笑顔に、香苗は一瞬で緊張がほぐれた。カフェでの会話は、久しぶりなのにまるで昨日も会っていたかのような自然な雰囲気で進んだ。香苗はふと、圭吾の仕事について尋ねてみた。
「そういえば、地方公務員って言ってたよね。具体的にどんな仕事をしてるの?」
圭吾は少しだけ表情を引き締め、仕事について語り始めた。「生活保護の担当をやってるんだ。いろんな事情を抱えた人と接することが多い。中には、パチンコにハマってしまって生活に支障をきたしてる人もいるんだけど…俺には、彼らにパチンコをやめろって強制する権限はないんだ。」
彼の真剣な口調に、香苗は意外な一面を見た気がした。圭吾もまた、葛藤を抱えながら仕事をしているのだと感じた。
「でも、圭吾自身もパチンコ好きでしょ?そういうとき、どう思うの?」香苗は素直に尋ねた。圭吾は少し考えてから答えた。「そうだな…俺自身、パチンコは楽しみでやってるけど、生活を壊すほどのめり込むのはやっぱり良くないよな。でも、彼らも何かに逃げたくてパチンコに走ってるんだと思うと、頭ごなしには言えないんだ。」
その言葉には、自分なりの正義と人への思いやりが含まれているように感じられた。香苗は、圭吾が単に無鉄砲なギャンブル好きではなく、人と真剣に向き合う一面を持っていることに気づき、彼への見方が少し変わった。
「なんか、意外だな。圭吾ってちゃんと考えてるんだね。」
その言葉に、圭吾は照れくさそうに笑い、頬をかいた。「まあ、意外と真面目にやってるんだよ、これでも。でもさ、香苗と話すと、自分が少しずつ変わってる気がするんだよね。」
二人はしばらくの間、静かに微笑み合った。その一瞬で、お互いに対する信頼が深まったように感じた。そして香苗は、彼ともう少しだけこの関係を続けてみてもいいかもしれないと思った。