新居から職場までは案外近く、バス20分で行ける距離にあった。
「おはようございまーす。」
タイムカードを切って出勤すると、わたしは自分のデスクについた。
すると、隣のデスクの同僚、西野成美がニヤニヤしながら話し掛けてきた。
「ねぇ、エレナ!聞いて聞いて!さっき課長たちが言ってたんだけど、明日取引先が主催のパーティーがあるらしいよ!」
「えっ?パーティー?随分急だね。」
「何か前社長が病気で亡くなったから、新社長就任式も兼ねてるらしい。」
「へぇ〜。」
成美はそのパーティーで良い出会いがないかウキウキしていたが、失恋したばかりのわたしは、パーティー気分ではなかった。
しかし、出席しないわけにいかない。
わたしは早く仕事を終えて、着替えを取りに行きたい、そればかり考えながらその日は勤務していた。
仕事が終わると、わたしは急いで瑛太と同棲していた家に向かった。
早く帰らないと瑛太と鉢合わせになってしまうかもしれないからだ。
瑛太の家に着くと、瑛太はまだ帰って来ていなくて、わたしは急いで必要最低限のものをバッグに詰め込み、それから家を出ると鍵を閉め、ポストに合鍵を落とした。
「、、、さようなら。」
最後にそう呟き、わたしは瑛太とおさらばした。
しかし、正直まだ若干、瑛太への未練が残っていたが、その未練は心の奥底にしまい込んだ。
わたしのコンプレックスを知ってて傷付けてフッた男のことなんて忘れろ!忘れろ!
自分にそう言い聞かせながら、わたしは新居へと帰ったのだった。