わたしは802号室の方の扉に鍵を差し込むと、鍵を開けた。

そして、恐る恐る扉を開け、中を覗いてみる。

「うわぁ、、、広っ。」

玄関がまず広く、一人住むには大き過ぎる縦長のシューズボックスがあり、わたしは靴を脱ぎ、中へと進んで行った。

廊下には大きなクローゼットがあり、リビングに辿り着くと、またその広さにも驚いたが、それ以上に驚いたのは、既に家具が一通り揃っていたことだった。

えっ?もう誰か住んでる?
しかし、誰かが暮らしているような生活感はない。

すると、リビングのテーブルの上に紙が置いてある事に気付いた。

見てみると、それは賃貸マンションの契約書だった。
名前記入欄のみに丸で囲んであり、連帯保証人を書く欄にはバツ印が書いてある。

そして、契約書の横には茶封筒があり、茶封筒には"株式会社At with HOME"と書かれており、その角の方には"本宮"の印鑑が押されていた。

本宮?何か聞いたことあるような、ないような、、、。
しかも、有名な不動産屋の名前だ。

実はわたしは、住むところに困っていた。

元彼の瑛太とは同棲をしていたのだが、同棲をしていた家の契約者は瑛太の為、わたしが出て行かなくてはいけないのだ。

何でわたしが住む場所に困ってるのを知ってるの?
しかも、こんな新築みたいな綺麗で立派な家、絶対家賃高いじゃん。

そう思いながら契約書を確認すると、家賃の欄に"¥50,000"と記されていた。

えっ?!こんな立派なマンションが5万?!
あり得ない!
普通なら絶対二桁はいく家賃のはず。

まさか、事故物件じゃないよね?
なんて疑う自分がいた。