すると、「隣、よろしいですか?」と声を掛けてくる人がいた。
ふと見上げると、そこに黒いロングコートを羽織り、薄いブルーのレンズのサングラスをかける男性が立っていた。
「はい、、、どうぞ。」
わたしが無愛想にそう言うと、その男性は微笑み「ありがとうございます。」と言い、コートを脱ぎながらマスターに「いつものお願いします。」と言っていた。
この人、常連なんだぁ。
それから、その男性はわたしの隣の椅子に座り、サングラスを外した。
サングラスを外し現れたのは、奥二重で切れ長のクールな瞳。
鼻筋の通った綺麗な横顔。
この人、モテるんだろうなぁ。
わたしは、ふとそんなことを思った。
「ここには、よく来るんですか?」
その男性が話し掛けてくる。
わたしは「初めて来ました。」と答えると、頬を濡らしていた涙を手のひらで拭った。
すると、マスターが「本宮さん、このお嬢さんにもう飲ませたらダメだよ?もうウイスキー6杯も飲んでるんだから。多分、そんな飲める人じゃないのに。」と言っているのが聞こえた。
「何かツライことがあったんですね。」
その男性の言葉に再び涙が溢れる。
拭っても拭っても止まってくれない涙。
わたしは気付けばお酒に呑まれ、眠りに落ちてしまっていた。