すると、挨拶回りをしていた本宮社長がふとこちらに視線を向けた。
わたしはヤバッ!と思い、俯き視線を逸らしたが、本宮社長がこちらに近付いて来る気配を感じる。
あー、バレちゃったかぁ、、、
そう思っていると、「水瀬さん。」とわたしを呼ぶ声が聞こえた。
わたしはゆっくりと顔を上げた。
そこには、バーでわたしの隣に座った人、、、奥二重で切れ長のクールな瞳でつい横顔に見惚れそうになった人である本宮社長が立っていた。
成美は驚いた表情で本宮社長とわたしを交互に見ると「え、知り合いなの?!」と小声で言った。
「あ、先日はどうも、、、。」
わたしがぎこちなく挨拶すると、本宮社長は「あの物件、気に入っていただけたみたいですね。」と言った。
「はい、とても助かりました。ありがとうございます。」
「いえいえ。水瀬さん、このあとは何かご予定はありますか?もしよれしければ、パーティーが終わってから、ご自宅の10階まで来ていただけますか?」
「えっ?10階、ですか?」
突然の誘いに困惑するわたしと、その横でも「どうゆうことなの?!」と本宮社長を前に控えめに騒いでいる成美がいた。
「22時頃、お待ちしてますね。」
本宮社長はそう言うと、成美に向けて「どうぞ、楽しんで行ってくださいね。」と微笑みかけ、挨拶回りに戻って行った。
「ヤバッ、、、何、あの微笑み、、、ズルい、、、はぁ、、、あんなイケメンに微笑みかけられて、惚れない女いる?!」
わたしの隣では、クールな本宮社長の微笑みに心を奪われかけている成美が騒いでいたが、わたしは"22時頃、お待ちしてますね。"の言葉が頭から離れず、成美の騒がしい声が全く耳に入ってはこなかったのだった。