それからというもの、私が出勤していたら絶対に彼は来てくれた。


コーヒーを頼む。彼は、絶対ちょうどのお金で払わない、絶対おつりを渡す。そのおつりは、いつも募金箱へといく。

最初、募金をあっさりする彼を見て驚いた。

その表情が面白かったようで、彼は微笑みながらこう答えた。


「だってこの募金って施設の子達への寄付でしょ?そんなのするでしょ」


と。ホストなのに神様なのかな、と錯覚しかけた。



募金箱にお金を入れたら、コーヒーが出来るまで少し私と喋る。 全然、たわいない話。


「ここ近くのパン屋美味しいよ」「最近、疲れてない?」「俺はちょーねむい」


出来上がったらお話はおわり。


そして、絶対言ってくれる。


「いつもありがとう、おやすみ」


って。



最近勝手に考えちゃう。私が彼の今日1日の最後に挨拶する人なんだろうな。って。
とてつもなく、幸せをかんじてしまう。


それでも、彼はホストなんだと思い出してしまうと踏み込んではいけないと強く感じてしまうのだ。






ーーー0時かー・・・


お母さんに言った時間より早いけど帰って過ごしでもくまの濃さを減らしたい。

私は、家へと帰ることにした。



玄関には、高いヒールと見たことの無い男性の靴があった。



気づいた時には、目の前に男の人とお母さんがいた。


「あ。こんばんは」


男の人は挨拶した。大体母より10は上そう。母は、40歳だから大体50歳くらい。

やっぱり、なんだか嫌な気配はあたる。


「あ。早かったじゃん。みーたんおかえり」


上機嫌のお母さん、この人はきっと・・・


「彼氏なんだ♪今度一緒に住む予定なの」


「・・・え?」


お母さんは嬉しそうに男の人の腕に絡みつく。
男の人は、嬉しそうなのか愛想笑いなのかどこか複雑そうな表情をしているが微笑むだけでなにもいわない。


・・・でもお母さんは、幸せそうだ。


こんなお母さんの表情、見たことあったっけ。



「そう、いいね。今後ともお母さんをよろしくお願いします」


店員スマイルで、男の人に微笑んだ。

男の人はどこか気まずそうな様子であった。

私はすぐに自室に行き、クレンジングシートで顔を拭いて部屋着に着替えてベッドに入った。


ゆっくり目を閉じて考える。



ーーー私の居場所はこの家じゃない。



一人暮らしをすればいい?そしたら、お母さんは喜んでくれるのかな?

卒業までも待ってくれないのかな?



それより早く逃げ出したい。



私はゆっくり目を閉じて、明日が来るのを静かに待つことにした。







次の日、早朝バイトだったが彼は来なかった。

さみしさが倍増する。

今日もコンビニのバイト行って、居酒屋。


こんな時に限って居酒屋バイトは21時まで。


「はあああああ」

「めっずらし、めちゃでかいため息つくじゃん」


愛ちゃんと私は、休憩中。あと10分で戻る。


「なんか、モヤモヤすることがたくさんあって」

「そんな日あるよ、あたりまえじゃん」

「・・・愛ちゃんはそんときなにするの?」

「クラブ行くかな」


・・・クラブ・・・かあ、、、


「湊音ちゃんタイプじゃないでしょ。なに行きたいの?」


こんなに、家に帰りたくないとい思ったのは初めてだった。