お母さんにはもっと素敵な名前の方が似合うのに、と思ったが、柔らかくほほえんだお母さんの顔は、不満そうには見えなかった。
 私はお母さんの名前には不服だったが、自分自身については何も不満はなかった。
 私は幸せな子供だった。

 ただ時々、よくわからないことが起こった。
 お母さんと買い物に出掛けた時なんかに、すれ違う人々がこちらを見ながらコソコソをうわさ話をしたり、男の子から「やーい、わるものめ」と石を投げられたりするのだ。何でみんな私たちに意地悪をするのだろう。

 (くや)しくてお母さんに理由を聞くと「ごめんね……」と言って私を抱きしめた。
 お母さんが悲しそうな顔をしていたので、子供ながらにそれ以上聞くことが出来なかった。

 そしてその理由がわかる時がやってきた。