《サンドリヨン》か《シンデレラ》か。
 名付けのシーンが近付いているというのに、どちらにするのかなかなか決まらず、こちらもずっとやきもきしていたのだった。
 まったく、わが町の《物語進行委員会》ときたらグダグダだ。
 
 主人公の名前がバーン! と示される大切な場面なので、私はこのシーンは特に緊張(きんちょう)したものだ。

 いよいよその場面がやってきた。頭の中にセリフをたたき込んだ私は、精一杯意地悪そうな声で妹をあざける。

 『ぅあなたっていつも暖炉(だんろ)の灰にまみれているわね。本当にそうね。……そうだわ! これからはあなたのこと、灰まみれの”サン……ッ』
 
 かんだ! 重要な場面なのに!
 
 『サンサンと太陽の光がさす明るい場所では、ますます灰まみれの汚さが目立つわね!』
 お母さん、ナイスフォローありがとう。
 
 『そう!灰まみれの《シンデレラ》と呼びましょう。それがいいわ、あなたのセンスって天才的ね。賛成』

 ついうっかり《サンドリヨン》と名付けてしまうところだった。