そして私達の世界、妹を中心としたこの世界のあらましを教えてもらったのは、その日の夜八時を回ってからだった。
 毎日午後八時から翌日(よくじつ)の午前六時までが私達の自由時間だからだそうだ。

 その夜、お母さんとお父様から告げられたことは、私の人生を大きく変えてしまうには十分衝撃的(しょうげきてき)な内容だった。

 私達は童話の国の住民で、それぞれに所属する物語に沿って、各々の役割を演じなければいけない。
 夜に自由時間が(もう)けられているのは、それが“よい子”の()る時間だからだそうだ。“よい子”が起きている時間は、いつ子供が本を開いて物語を読むかわからないので、その間は絶対に物語からはずれた行動をしてはいけない。それがこの世界のルールだと、その日初めて教わった。
(ちなみに、この自由時間以外のよい子が起きている時間帯は通称『よい子タイム』と呼ばれているらしい)

 私達がいるのはペロー童話の「シンデレラ」。

 そしてその「シンデレラ」の主人公こそ、さっき会った新しい妹なのだ。私は大いに納得(なっとく)した。