シャルロッテは驚きに目を丸めた。この時間はいつも執務で忙しいはずなのに、どうしているのだろうか。

「どうしたんですか?」
「ちょうど書庫に入る姿が見えた」
「そうだったのですね。私は本を探しに来ました」

 書庫に来る理由など、それしかない。変なことを質問するもんだと、シャルロッテは思った。もっと

「何の本だ?」
「え?」
「ここは私が集めた本しかない。どんな本か教えろ」
「もしかして、探してくれるんですか?」
「君が端から探すのは効率が悪いだろう」

 カタルは冷たく言い放った。もっと優しい言い方があるだろう。しかし、彼の言い分はごもっともだった。
 忙しいカタルの時間を奪うのは申し訳ないが、本棚を端から端まで全部確認するとなると日がくれてしまう。カタルの申し出はありがたかった。

「獣人の本を探してるんです!」
「……獣人か。それはここにはない」
「そうなんですか!?」

 なんでも揃っていそうなのに、とシャルロッテは肩を落とした。もし三角耳があったら、シャルロッテの耳は垂れ下がっていただろう。
 カタルは難しい顔で思案したのち、書庫の内鍵を締める。そして、小さな声で「着いてこい」と言った。
 書庫は縦長で、窓がない。ランプの光だけが頼りだというのに、カタルは何も持たずズカズカと奥に進んで行く。シャルロッテは慌ててランプの灯りを頼りにカタルに着いて行った。