オリバーに視線を向けると苦笑を浮かべる。どうやら、やる気に満ちあふれているようだ。シャルロッテがそれに水を差すわけはいかない。

「じゃあ、また来るね。お菓子だけ置いておくから、疲れたら食べてね」

 シャルロッテは背中を向けたままのアッシュの頭を撫でた。アッシュに「頑張ってね」と応援の言葉を贈って、部屋を出る。

(カタル様も頑固なところがあるし、親子って似るのね)

 カタルの眉間の皺を思いだしながら、シャルロッテは方を揺らして笑った。おそらく、カ

(時間空いちゃったな~)

 アッシュの勉強が始まると、こんなに暇だとは思いもしなかった。残念ながら、勉強を教えることができないためシャルロッテの出番はない。

(そうだ! 獣人について調べよう!)

 アッシュの継母になるのだ。知識は大いに超したことはない。これからどんなことが起きても対処できるように。アッシュやカタルのことを知ることは間違いではないだろう。

(獣人についてどうやって調べよう?)

 シャルロッテは本邸に向かいながら思案する。一つの方法はカタルやオリバーに聞くこと。しかし、カタルは執務で忙しく、オリバーもアッシュの教育で忙しい。その上、シャルロッテにまで勉強を教えろというのは酷だ。

(そうなったら、本に教えてもらうしかないか!)

 カタルとオリバーの他に、皇族の知り合いはいない。ならば、本を読むしなかいだろう。シャルロッテは本邸にある書庫に向かった。
 アロンソ邸には立派な書庫がある。すべてカタルが買い集めたもので、シャルロッテも入ることを許されていた。時間があるときにちらっと覗いたことがあったのだが、難しそうな本がずらりと並んでいたのを覚えている。

(あれだけ難しい本ばっかりなら、獣人に関する本も置いてあるよね!)


 薄暗い書庫の入り口にはランプが置いてあった。これを灯し、本を探すのだ。

「獣人……獣人……」

 背表紙から獣人に関する本を端から探す。本棚を一つ分見終えた時に、扉が開く音が響いた。
 驚きランプで照らす。

「カタル様!?」
「……ここで何をしている?」