アッシュは嬉しそうに尻尾を振り、シャルロッテの隣に座って林檎を切る手をジッと見た。あまり器用なほうではないが、林檎くらいなら切れる。一欠片切り離し、皮を少し残してウサギの形を作る。それをアッシュの目の前に差し出した。

「はい、ウサギさん」
「……ウ、サギ?」

(そっか知らないか)

 実のところ、シャルロッテも本物は見たことがない。動物の図鑑で見たことがあるだけだ。目撃した画家の絵を見ると、毛がふわふわのように見える。
 その顔は温厚そうで、おそろしい動物には見えない。一度遭遇したい動物の一つだった。

「んー。かわいいお友達だよ」

 アッシュはシャクッと音を立ててかじりつく。頬にいっぱい貯めて食べる姿は愛らしい。ずっと見ていられそうだ。
 シャルロッテはアッシュが食べ終わる前に次の林檎を切り、彼に手渡した。おいしそうに食べる。彼は気に入ったのか、二個、三個と口に入れた。
 満足したのか、コロンと横になった瞬間人間の姿から狼の姿に戻る。

「ん~! やっぱりかわいい!」

 シャルロッテは思わずアッシュの腹を撫でまわした。ふわふわとしたやわらかい毛がシャルロッテを幸福にしてくれる。
 成長するにつれ、この姿が見られなくなるのは寂しいものだ。

(今のうちに堪能しなくちゃっ!)

 シャルロッテは嬉しそうに尻尾を振るアッシュを抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。