シャルロッテは思わず声を上げた。オリバーは「意外でしょう?」と笑う。

「皇帝の直系ということもあって、周りをよく見ています。思慮深く傷つきやすい」
「……そうは見えませんけどね」

 思わず本音がもれた。いつも眉間に皺を寄せて、「忙しい」と言っているイメージだ。オリバーは肩を揺らして笑う。

「カタルは昔から誤解を受けやすいんですよ。シャルロッテ嬢だって彼の噂は知っているでしょう?」
「まあ、ある程度は」

 妻を捨て、子どもを奪った『冷酷悪魔』ということくらいだけど。

「カタルは真面目な上に口下手なので、嫌われ者になることを厭わない。そういうところがあります」
「なるほど……」

 やはりよくわからない。しかし、シャルロッテはわからないなりに頷いた。
 オリバーは穏やかな笑みを向ける。彼は色々シャルロッテに教えてくれるが、確信をついたことは絶対に言わない。
 すべての判断は自分でせよと言わんばかりだ。
 オリバーはシャルロッテの手にある荷物を見下ろして首を傾げた。

「そういえば、この荷物はどうしたのですか?」
「ああ、これですか? アッシュとピクニックしようと思って。オリバー様もご一緒にいかがですか?」
「ええ、ぜひ」

 彼はそう言っていつもの笑みを浮かべる。
 二人は並んでアッシュの元へと向かった。