腕の中には小さくてふわふわな子狼が丸まって眠っていた。

(そうだった。一緒に眠ったんだった!)

 昼間に眠ったのに、まだ明るい。そんなに時間は経っていなさそうなのに、やけにすっきりとしている。
 アッシュは目を開くと、ぺろりとシャルロッテの手を舐めた。

(可愛い~)

 寝起きのアッシュは視線を彷徨わせる。それが可愛すぎて、頭をぐりぐりと撫で回す。
 アッシュの部屋のテーブルには食事が並んでいる。一つは大人用。シャルロッテの物だろう。そして、もう一つは空になったアッシュの物だ。
 シャルロッテは首を傾げた。

(私がアッシュの部屋に来たのは昼で、今は多分昼間よね? なんでごはんが?)

 食事は乾いている。アッシュは心配そうにシャルロッテの足元をグルグルと回った。

(もしかして、私、丸一日眠ってた?)

 カタルかオリバーが食事を持って来たのではないか。その時にアッシュは目を覚まして食べたのだろう。
 そういえば、お腹がすいている。着替えもしたいし、風呂にも入りたかった。

「アッシュ、私は一回本邸に行ってくるね」
「キュゥン……」

 アッシュは寂しそうに鳴いた。その声があまりにも苦しそうでシャルロッテは「まだ一緒にいる」といいそうになる。あと三日くらいここでゴロゴロしていてもいいのではないか。邪な考えが頭を過る。

(だめだめ。身支度はちゃんとしないと!)

 シャルロッテは床に座り、アッシュと視線を合わせて言った。

「パパに外に行っていいか聞いてくるから、いいよって言ってもらったら遊びにいこうね」

 アッシュが不思議そうに目を瞬かせた。

(そっか、外も知らないんだ。絶対許可をもらわなくちゃ!)

「いい子で待ってたら、あとでいいところに連れて行ってあげる」

 シャルロッテの言葉にアッシュが嬉しそうに鳴いた。