あははと笑うシャルロッテに、彼は小さくため息を吐いた。

「すぐに終わらせるからそこに座って手を出せ」

 カタルはぶっきらぼうに言うと、棚から救急箱を取り出した。

「また消毒しますか?」
「しておくに越したことはない」
「なら、優しくお願いします」

 シャルロッテは震える手を差し出す。前回の痛みは相当だった。またあの痛みをもう一度感じると思うと手が震えるのも仕方ない。
 カタルがシャルロッテの腕をつかむと眉根を寄せる。くっきり三本。

「おい」
「なんですか?」
「熱があるな」
「へ? そんなはずありません! 私は健康そのものです!」

 シャルロッテは元気であることを主張するために立ち上がる。立ち上がった瞬間、目の前が歪んだ。

「あれ?」

 足に力が入らない。カタルの身体がかゆっくりと傾いていく。焦った顔が面白かった。「体調が悪いのはあなたのほうじゃない」と言おうと口を開く。

「おいっ!」

 カタルの叫び声が聞こえた気がしたが、なぜか目の前が真っ暗になった。

 ◇◆◇

 次に目が覚めたのがいつなのかは覚えていない。ただ、窓の外が明るかったから、昼か夜なのだろう。

(身体が重い……)

 朝ならば、アッシュのごはんを持っていかねば。きっと、鳴いてシャルロッテのことを待っているだろう。