シャルロッテは舌をぺろりと出して笑った。

「私の記憶では、シャルロッテ嬢の動物好きは昔から知られていたわけではありませんよね?」
「はい。私もある程度良識は持ち合わせていますので、動物好きと公言するようなことはしていませんでした」

 シャルロッテも帝国の教育をしっかりと受けた淑女だ。自分の趣味があまり他人には好まれないことは理解していた。だから、仲のいい友人にも、当時いた婚約者にも言っていなかったのだ。
 シャルロッテは、昔を思い出しながら苦笑する。

「私が馬鹿だったというだけの話なのですが、せっかくですから聞いてください」
「もちろん」

 シャルロッテは天井を見上げた。

 世間にシャルロッテの動物好きが露見したのは、四年前。ちょうどカタルとクロエ・ピエタ侯爵令嬢が婚約を発表した後のことだからよく覚えている。
 新聞の一面に載っていたし、あのころのカタルは令嬢たちに人気だった。クロエとの婚約が発表され、何人もの令嬢が涙をのんだのだ。
 そのころのシャルロッテには、婚約者がいたから関係のない話だったけれど。
 当時の婚約者との関係は良好だったが、動物好きのことは言っていなかった。しかし、将来は犬や猫を屋敷で飼いたいという夢は諦められずにいたのだ。