「それは、魔法が解決してくれます。精神干渉の魔法で人間のように錯覚させるのですよ」
「へぇ……。魔法ってすごいんですね」
「ええ。皇族が一番研究に力を入れた分野です。妻の心を守りつつ、身体に負担のない方法。数百年の歴史があるのですよ」

 シャルロッテは感嘆の声をあげながら話を聞いた。
 魔法の存在は知っていても、実のところどういうものなのかはよく知らない。全員が練習したから使えるというものでもなく、特性のある人が血のにじむような努力の末に使えるようになるものだと聞いている。
 魔法契約も不思議だった。
 思い出し、右手の甲を見たけれど、あの時でていた印はない。
 オリバーは目を細めて笑うと、小さなため息を吐く。

「私たち皇族は両親のどちらかが人間です。人間である親は子が獣人であることを知りません。私たちは生涯親に嘘を吐いて生きなければならないのです」
「嘘……か。つらいですね」
「ですが、アッシュは嘘を吐かなくてもいい。だから、きっと誰よりも幸せな皇族になるでしょう」
「そうですね。だって、私がたっぷり愛情を注ぎますから!」

 シャルロッテのできることはたかが知れているが、アッシュへの愛情は誰にも負けない自信があった。まだ継母未満ではあるが、一年後には正式に母親にもなる。愛に時間など関係ないだろう。

「本当に不思議だ。なぜシャルロッテ嬢は動物が平気……いや、好きになったのですか?」

 オリバーが心底不思議そうに尋ねる。