開いた扉から顔を見せたのは、オリバーだ。彼は人のよさそうな笑みを浮かべ、部屋に入ってくる。
 アッシュはオリバーのことが苦手なようで、まだ唸り声を上げていた。

「オリバー様、おはようございます」
「シャルロッテ嬢、ごきげんよう。随分懐いているようですね」

 オリバーはシャルロッテの後ろに隠れるアッシュを見て言った。
 シャルロッテは頬を緩ませる。傍から見ても懐かれているように見えるのは嬉しい。シャルロッテはアッシュを抱き上げると、宥めるように撫でた。

「アッシュ、大丈夫だよ。オリバー伯父様よ」

 オリバーはカタルの従兄弟だから、正確には従兄弟伯父と呼ぶのだろうか。しかし、三歳にはそこまでの説明は不要だろう。
 シャルロッテはオリバーにソファに座るように促し、自分も向かいに座った。
 アッシュはシャルロッテの腕の中で丸くなる。まだ警戒しているようだったが、シャルロッテが平気な素振りを見せたからか、唸り声は上げなくなった。
 その代わり、遊び疲れていたのか寝息を立てる。今までには見られなかった行動だ。いつも誰かにおびえ、震えていた。シャルロッテは愛おしさに目を細める。

「本当にアッシュはシャルロッテ嬢が気に入ったようで、よかったです」
「ありがとうございます。本当に可愛くて、私も幸せです」
「それは顔を見ればわかります」

 オリバーは丸くなって背中を向けるアッシュを嬉しそうに見つめた。