継母としての役割をこなせば、犬や猫を飼っていいということだろう。

「ああ、我が家には本邸の他に別邸がある。今はアッシュ……息子が暮らしているが、のちのちそこを君が自由に使えるようにしよう。どうだろうか?」
「もちろん、お受けします!」

 シャルロッテは二つ返事で引き受けた。
 こんなにいい条件で結婚する機会は今後訪れない。
 皇族との繋がりができれば、ベルテ家は豊かになる。継母としての役割をこなすことで、犬や猫との生活も約束されている。
 カタルの話から察するに、必要なのは『息子の母親』であって、『自分の妻』ではないようだ。

「そんなに簡単に決めていいのか? 両親に相談する必要もあるだろう?」
「構いません。殿下以上の相手はおりませんし」

 皇帝の唯一の弟であるカタル以上の相手など探すことはできない。

「お互いに条件を守るために魔法契約を結ぶことになるが……」
「もちろん構いません。皇族にもなると魔法契約を使うんですね」

 ニカーナ帝国で魔法は貴重だ。魔法使いは千人に一人生まれる程度の確立でしか生まれない。魔法使いのほとんどは帝国が管理し、帝国のために働いている。
 だから、魔法の恩恵に預かれることは貴族であっても少ないのだ。魔法契約は書面での契約よりも効力が強いと聞いたことがある。しかし、それを実際に見たことはなかった。

「君が問題ないのであれば、シャルロッテ嬢。私の妻になっていただけるだろうか?」

 カタルが手を差し出す。
 胸がときめくような言葉だ。しかし、シャルロッテは別の意味で胸を高鳴らせていた。

(これで念願の……! もふもふパラダイスが作れるわ……!)

 皇族ともなれば、一匹といわず何匹でも飼えそうだ。
 右手にもふもふ。左手にももふもふ。
 もふもふに囲まれて眠る姿を想像しただけで、気持ちが高揚した。
 シャルロッテは潤んだ瞳で、カタルの手を取る。

「よろしくお願いします」

 こうして、シャルロッテの二十回に渡る婚活は幕を閉じたのだ。