小さな笑い声が聞こえ、シャルロッテはカタルを見上げる。

「本当に! 本当にふわふわなんですよ! ずっと撫でていたいくらい! 抱きしめて眠ったら、最高の夢が見られると思います!」

 つい語ってしまった。
 動物の話を聞いてくれる人はいない。家族も理解はしてもやはり、苦手な動物の話は聞きたくないだろうし、友人やメイドに話すこともできなかった。
 カタルはわずかに目を細めて笑う。
 その顔が神々しくて、シャルロッテは思わず目を細める。

「君が本当に好きなのはわかった」
「よ……よかったです。理解していただけて……」

 興奮して熱が昇ったのか、頬が熱い。
 手の甲を頬に何度も押しつけた。

「話を戻しましょう! 私の噂を聞いてわざわざ求婚するということは、その条件をのむことができるということ……ですよね?」
「そういうことだ」
「それは……つまり、犬や猫を屋敷で飼っても?」
「ああ。好きなだけ飼ってくれて構わない」

 カタルはあっさりとした様子で言った。
 普通なら考えられないことだ。

(本当に? 詐欺じゃなくて?)

 シャルロッテはカタルの目をジッと見つめる。しかし、嫌悪の色はない。彼は動物を家で飼うことは嫌ではないようだ。

「本当にいいんですか? 廊下を犬が走るかもしれませんよ!? 起きたら猫が足元で丸まって寝ているかも」
「好きにしたらいい」

 カタルは短く答える。
 今までにシャルロッテの理想を語ったことは何度かある。家族や近しい友人たち。しかし、誰もが想像すらしたくないと言わんばかりに、顔をしかめるのだ。

(皇族ともなると感情を表に出さない訓練とかするのかしら?)

 それくらい、カタルからは嫌悪の感情が出てこなかった。

「では、教えてください!」
「ん?」
「条件です。私の条件をのむということは、殿下にも条件があるのですよね?」

 結婚は慈善事業ではない。
 わざわざ面倒な条件がある女に求婚をするということは、それと同じくらい面倒な条件があるということだ。

「趣味は変わっているが、聡明なようだ」

 カタルは黄金の瞳を細めて、小さく笑った。