シャルロッテ・ベルテの名前は社交界では有名だ。
それは、本人が自覚するほどに。
最近ではダンスすら誘われなくなった。「シャルロッテ嬢と目が合ったら、結婚を強要されるぞ」と耳打ちしているのを聞いたことがある。
そんな無節操なことをしたこともないし、するつもりもない。しかし、躍起になって反論するつもりもなかった。
性格の悪い人間が自分から排除されていくのだから、これほど楽なことはない。
結果、周りに残ったのは心優しい人だらけになったのだから、シャルロッテの判断は間違っていなかっただろう。
シャルロッテは噂を止めたことはない。『動物好きの変人』は事実だ。なにせ、結婚の条件はただ一つ。永遠の愛でもなく、「屋敷の中で犬や猫を飼うこと」なのだから。
この無謀とも思えるような条件をのんでくれる人であれば、恋心が生まれなくとも感謝と尊敬の気持ちを持って結婚生活を送れるだろう。
カタル・アロンソは、多くの耳と目を持つと言われる皇族の一人だ。彼がシャルロッテの噂をまったく把握せずに求婚するとは思えなかった。
「噂程度ですが」
カタルは短く言う。そして、金の瞳がシャルロッテを探るように見た。
「犬や猫を屋敷で飼うことを望んでいるとか」
「はい、その通りです」
シャルロッテは臆することなく笑みを向けた。軽蔑されたところで今更だ。既に二十一回、経験済みだから慣れているだけだけれど。
けれど、カタルは違った。わずかに目を見開いただけ。そこに軽蔑の色はない。どちらかというと驚きのほうが近い。
それは、本人が自覚するほどに。
最近ではダンスすら誘われなくなった。「シャルロッテ嬢と目が合ったら、結婚を強要されるぞ」と耳打ちしているのを聞いたことがある。
そんな無節操なことをしたこともないし、するつもりもない。しかし、躍起になって反論するつもりもなかった。
性格の悪い人間が自分から排除されていくのだから、これほど楽なことはない。
結果、周りに残ったのは心優しい人だらけになったのだから、シャルロッテの判断は間違っていなかっただろう。
シャルロッテは噂を止めたことはない。『動物好きの変人』は事実だ。なにせ、結婚の条件はただ一つ。永遠の愛でもなく、「屋敷の中で犬や猫を飼うこと」なのだから。
この無謀とも思えるような条件をのんでくれる人であれば、恋心が生まれなくとも感謝と尊敬の気持ちを持って結婚生活を送れるだろう。
カタル・アロンソは、多くの耳と目を持つと言われる皇族の一人だ。彼がシャルロッテの噂をまったく把握せずに求婚するとは思えなかった。
「噂程度ですが」
カタルは短く言う。そして、金の瞳がシャルロッテを探るように見た。
「犬や猫を屋敷で飼うことを望んでいるとか」
「はい、その通りです」
シャルロッテは臆することなく笑みを向けた。軽蔑されたところで今更だ。既に二十一回、経験済みだから慣れているだけだけれど。
けれど、カタルは違った。わずかに目を見開いただけ。そこに軽蔑の色はない。どちらかというと驚きのほうが近い。