『もしもし。』

電話の向こうから聞こえてきたひなの声は少し鼻声で。

泣いてたのかな。

俺が、泣かせた。

「『ごめんなさい!」』

え?

「ひ、ひな?」

なんでひなが謝るの?

『私、ちゃんと話もしてないのに逃げて…今日も…』

あー、もう。

会いたい、今すぐ。

「ひな、会いたい。会ってちゃんと、話したい。」

『…うん、私も、律君と話がしたい。』

「迎えに行く。」

『私、律君の家の近くの駅に行くね。』

そう言うとひなは電話を切った。

俺はコートをはおり、家を飛び出した。

最寄りの駅で待つこと二十分。

待っている間も早く会いたい、そればっかりで。

早く、早く。

「律君!」

ホームから駆け込んできたのは、会いたくて仕方なかった人。

俺に駆け寄ってくるその姿がとても愛おしくて。

外なのに、抱きしめてしまいそうになるくらい。

「律君、私…っくしゅ!」

くしゃみをするひな。