ドン!

俺の手元に何かがぶつかって、持っていた携帯が床に吹っ飛ぶ。

「すっ、すみません!ごめんなさい!」

あたった女の子が携帯を拾い上げて、その目線は携帯の画面へ。

俺は慌てて携帯を取り上げた。

少し乱暴になってしまったことに後悔。

それがひなとの出会いだった。

ひなと俺には共通点が多かった。

妹がいるということ、剣道部だったこと、そしてひなもまた、彼氏がいたことがなかった。

女子校育ちでゆっくりのんびり話すひな。

気がついたら意気投合していて、もっともっと話してみたいって思っていた。

それから大学内ではいつも自然と目線はひなを探していた。

会えた日には嬉しくて、そしてまた会いたいって思った。

それが恋心だと気がついたのはゴールデンウイーク真近のある日。

「なあ、律ってひなのちゃんと付き合い始めたの?」

風馬が突然そんなことを言い出して。


「いや、付き合ってないけど。」