一ノ瀬家の事情は少し複雑で。

俺の母親、一ノ瀬幸は俺が三歳のとき、交通事故で亡くなった。

その時一緒に車に乗っていた母親の妹夫婦、神崎暁君と唯ちゃん。

そして生まれたばかりの玲と愛。

実は愛は俺達とは本当の兄妹ではない。

愛は暁君と唯ちゃんの一人娘として生まれた。

だけど事故で両親を失った愛は一ノ瀬家で引き取ることに。

そして俺達は父親である一ノ瀬大地に男手一つで育てられた。

今やほとんど仕事で海外を飛び回り、帰ってくることがめったにない父親は俺にとって尊敬する人物だ。

今はみんな高校生になったから、当番制というものがあるけど、小さい頃は一番上の俺がしっかりしなきゃ、と思っていた。

だから恋なんて興味もなくて。

告白されたことは何度があるけど、全然話したこともない女子から突然そんなことを言われて、ただ戸惑うだけ。

そんな俺が、初めて恋に落ちたのは、大学一年生の春。