「えっー！お前ら、まだ何もしてねえの！？」

白昼堂々、真っ昼間の講義室で大きな声を上げた柚木風馬の口を慌てて塞ぐ。

「バカ！声がでかいって！」

休み時間でさっきまで話していた学生の視線が痛い。

「悪い、でもお前ら付き合って…」

「…二年半、だよ…」

事の発端は数分前、長い講義の間の休み時間、いつものように近くの席に座っていた風馬たちと話していた会話。

「もうすぐバレンタインだな！いいよな、お前らは彼女いて！」

同じ授業を選択していて大学内でもよくつるんでいる四人のうちの一人、瀬尾修司が俺達を見ていった。

風馬には上原希奈ちゃんという今時風のかわいい彼女がいる。

桐嶋瑛斗には俺と同じくらい付き合っている、光原和華ちゃんという彼女がいる。

そして、俺にも大切な彼女がいる。

名前は綾瀬ひなの、同じ大学の文学部の英文科専攻。

俺にとって、初めての彼女だ。

「いくら初めて同士だからって遅くない？」