だってずっと憧れていた、初デート。

しかも相手は大好きな一ノ瀬君。

こんな幸せな一日、ないよ。

「一ノ瀬君は?」

聞いてみたかったこと。

でも、答えてくれるわけないよね…

黙ってうつむいた一ノ瀬君。

あたし、図々しかったかな。

「…ごめん、なんでもな…」

い、と言おうとした瞬間、一ノ瀬君が顔を上げた。

白い頬が少しだけ赤く見えるのは、夕日のせいなのかな。

「…来てよかった…」

そして一番見たかったものが見れた。

いつぶりに見たかな、満面の笑みの一ノ瀬君。

その笑顔に胸がきゅうって苦しくなる。

好きって気持ちが溢れだす。

だけど二秒後、その顔はいつものクールなポーカーフェイスに戻っていて。

「そろそろ帰るよ。」

立ち上がったその横顔はいつもの落ち着いた表情。

だけど…

「はい。」

差し出されたその手。

「…えっと…」

あたしがなにか言う前に、その手はあたしの手を包み込んでいて。